カナダを代表するベテランルシアー、ウィリアム・ラスキン。彼のギターの大きな特徴は、ヘッドから指板にかけて色鮮やかに施された、繊細で芸術的なインレイワーク。 ギターをキャンバスにして描く彼のインレイワークは、ギターの枠を飛び越え、まさにアート作品。しかも、それらのインレイワークは、全てハンドカットによる手作業によって仕上げられているというから驚きです。
また、インレイで描くデザインには必ず、ストーリー性や意図が盛り込まれており、その奥深さを感じます。さらに、同じデザインのモノを複数本製作することが一切ないため、まさに 正真正銘の ”1本もの”のギターと言えるでしょう。
第一印象ではインレイの素晴らしさに惹き込まれてしまいますが、ギターとしてのクオリティーも相当に素晴らしく、インレイがなくとも十分通用するサウンドとクオリティーを備えています。
また、意外に知られていないのですが、近年では多く見かけるようになった、アームレストや、リブレストといった、ベベル加工も実はラスキン氏が初めて試みた技法です。
ラスキン氏のギターは、1997年に、Saidye Bronfman Award for Excellence というカナダで最も大きい、ビジュアルアートの賞を、ギター製作家として初めて受賞し、数本のギターが、 カナダの博物館に展示されるなど、アートの世界でもその実力が高く評価されています。 他の製作家には決して真似のできない芸術性と独創性に満ち溢れ、30年以上に渡り輝き続けている類稀な製作家と言えます。
そして今回、完成したギターは、”OAHU WARTERWORLD”と名付けられました。
これは、当店からのオーダー内容が、オール・ハワイアン・コア・ボディーで製作、デザインは木材に因んで、ハワイの風土を感じる鮮やかなデザイン、 というものだったことと、多くの動物やサンゴなどが、ハワイ周辺の海から生まれた、ということからヒントを得て、このタイトルとデザインが生まれたそうです。
まず、指板には温暖なハワイの海中世界が描かれ、その中心には圧倒的な大きさでザトウクジラが泳いでおり、その下には、ツノダシ、アオウミガメ、タツノオトシゴ、バタフライフィッシュなどの生物が描かれ、そして一番下には、8種類の色鮮やかなサンゴたちが描かれています。 ヘッドには、澄んだ青い空に向かってイルカが水しぶきを上げて飛び跳ねていて、ハワイの水中世界から空までを見事に表現しています。
躍動感溢れる立体感と緻密で細かいラインで描かれた表情は、見ていて飽きることがありません。
尚、この多様な色使いには、20種類近い素材を使って仕上げられたそうです。
また、オールコアボディーでの製作は、今回が初めてだったそうですが、仕上がりには相当満足してる様子でした。
もちろんサウンドも、インレイワークに負けない素晴らしい完成度で、改めて彼のギターの素晴らしさを感じる1本になりました。
ギターとしても完成度、アートとしての素晴らしさ、どちらも最高レベルのギターは、なかなかお目にかかれません。 |